東京〜現実歪曲フィールド界隈

東京で外資系企業の営業で働く人

第三章(3)頭の中の構造化──TOCのクラウド

この世には、形を伴った構造体がある。ピラミッドとか法隆寺五重塔とか。
もう一方で目には見えない強固な思考の構造体も存在する。思い込みや思考回路とか。

第三章では、「構造」をキーワードに、知的生産ツールを語る。
本節では、いよいよ目には見えないものへと踏み込もう。

ザ・ゴール2の思考プロセス

ロジックツリー、ピラミッドストラクチャーという、目に見えて思考を構造化するツールは、説明する上で非常に便利だ。
ほぼ、誤解されない。
概ね、理解を共有できる。

しかし、そうではない構造化ツールがあることを、私は知っていた。
ザ・ゴール2で扱われている思考プロセスのツールだ。

初版発行は2002年2月21日。
記憶では、発売当時の大型書店の平積みから手に取って読んだはず。
ザ・ゴール同様に、ストーリー展開が面白くて、一気読みした。
しかし、主役級の思考ツールは、なんだかよくわからないもの、だけれど興味深いものとして、ずっと頭の中にこびりついていた。

「非常に強力な思考ツール!」と再三再四取り上げられて、ストーリ上で大活躍するけれど、当時は「どう使ったらいいのか」全くピンと来なかった。
でも、覚えていたのだ。
きっと、有効なツールなのであろう。

そう思っていただけに、このブログで取り上げるアイデアが湧いた時、勉強し直すチャンスが来た、と素直に喜んだ。
本ブログでは、知的生産ツールを一通り紹介する。
フレームワーク、KPI、構造化のツール。
二つの対立する課題を鮮やかに解消する思考ツールとして、ザ・ゴール2の思考ツールも含めようと企画を立てた。

さっそく1週間前に、ザ・ゴール2を区立図書館で借りて、通勤時間、昼休みなどを使って、斜め読みしてみた。知的ツールの使い方を説明している箇所を探そうとして。
しかし、ストーリ展開の中でスポット的に登場するばかりで、思考ツールの使い方を説明している部分がない。
これは、非常に焦る展開だ。
クラウド、と呼ばれる対立構造を解きほぐすツールの効能は分かる。
だが、どうやったらそれを利用できるのか、皆目、見当がつかない。
執筆予定の日まで、残りわずかになってしまった。

そこで、AIにぼやいてみた。
クラウド」が分からないのは、私の問題ではなかった。
そもそも、ザ・ゴール2には、具体的な方法は書いてないのだった。

AIのおすすめに従って、解説本を手に取ることにした。
すっかり準備時間は無くなっていたので、Kindleで購入することにしたのだ。 今原稿を書いている2日前のことである。

TOCクラウド

AIが勧めた本。
少し読み進めたら、出てきた。
ザ・ゴール2で見た、対立構造図、「クラウド」。
ロジックツリーの精緻な美しさとは打って変わって、これで何が説明できるのだろう?と不安になる、単純な図。
こんなんで大丈夫なのか?

それでも、解説本を読み進めていくと、少しずつ輪郭が見えてきたような気がした。
だが、全く馴染んでこない。
理解はできるのだが、納得感がない。
自分の血肉にして、完全にモノにするには、あと何日かかるのだろう?
絶望的な気分になった。

だから、またAIに愚痴った。

ちょっと、ブログに書くには、理解するだけの十分な時間が必要。 だから、執筆日誌で今抱えている苦悩だとか、 参考にしている本のことを紹介する記事を書いて、 なんとか毎日更新だけ継続して、 本編は後回しにしてもええのかなぁ・・・

そうしたら、「その「歯がゆさ」は、書き手として健全な感覚です。
結論から言うと、あなたが感じている逡巡は クラウドそのものの性質と完全に同型で・・」とほざいてきやがった。

ハッとした。
そう、自分は今、対立構造の只中に立っていたのだった。

ブログ筆者の対立構造

このブログを書き始めたきっかけは、年末休みにAIと壁打ちをして、「自分が読みたい本」の主題を掴んだからだ。だから、なるべく早く、本としてのまとまりを作りたい。結論を見たい。それがブログを書くモチベーションだ。

しかし、その一方で、十分に理解しないでブログを書く、人に説明するのは、筆者としてあるまじき行為ではないか、と思ったのである。

要するに、(クラウドの書き方に倣うと)

  • D: TOCクラウドが理解できるまで本編では書かない。
  • D': とにかくAIを使ってでも、予定通りTOCクラウドを本編で書き、先へ進む。

という二つの相反する立場のどちらにもつけられない、宙ぶらりんな状態にいたのだった。

共通目的を考える

そんな私には、一切構うことなく、AIは淡々と先に進もうとする。

次に、対立構造にはなっているけれども、DとD'のどちらにも共通する究極的な目的を考えましょう。

一度は本気でブログを運営しようと考えたことのある人なら、
ブログは原則、毎日更新すべきだ と、思い込んでいるはずだ。
だから私は、共通目的(A)に
ブログを毎日更新するため
と置こうとした。

AIにそう回答したら、ダメ出しを受けた。
ここには「行動」ではなくて、「目的」を置くのですと。
もう少し考えた。
意味のあるブログの記事を毎日提供すること
これならどうだ。十分に目的である。

AIは随分と評価してくれた。
だが、まだもう少し磨きましょうと。
「意味のある」が後でどうにでも捻じ曲げられるから、良くないのらしい。
なのでAIは、

A:読者にとって意味のあるブログ記事を、毎日提供すること

を提案してきた。
もちろん異論などない。

対立構造へのなぜ?

次にAIがアドバイスしたことは、

B:なぜ「理解できてから書きたい」のか

C:なぜ「連載を止めたくない」のか

事実ではなく、信念・恐れ・経験をあげなさいと。

Bについて考えを進めた。
理解してから、書きたいというのは、別に間違いを犯すことを恐れているわけではない。
理解していないのに、私は理解しています、と自分を欺いていることが、受けれられないのだ。

AIが即座にまとめてくれる。

B:自分が理解していないことを、理解しているふりをして書きたくない

なぜ、これがいいのか?

  • 技術的問題ではなく
  • スキル不足でもなく
  • 価値観・倫理・自己同一性の問題

だからだそうだ。

次に、Cについて考えた。
「書いている本」の全体から見たとき、TOCの思考ツールの話は瑣事でしかない。
それよりも、全体像を早く完成させたほうがいい。
目の前の障害にかまけないで、大志である本物のゴールへ早く近づくこと、を考えるべきだ。
そうしたい、という欲求でもある。

再び、AIが翻訳してくれた。

C:個別の難所に足を取られず、
 本全体の完成という大きなゴールに向けて前進したい

これは、

の対立になっており、TOC理論そのものを内包したCだ、と評価していた。

TOCクラウドクラウド

正直いうと、このクラウドの図を見ても、まだ、さっぱり解決策が見えない。
このダイアグラムの意味は後で考えるとして、次にやることは何か?

AIがアドバイスを続けてくれる。

そして「蒸発」へ

次の段階でやることは、ただ一つです。
BとCが“本当に両立できない”と思っている理由は何か?
つまり、

  • Bを守るには、なぜDしかないと思っているのか
  • Cを守るには、なぜD’しかないと思っているのか

このとき出てくるのが、
「理解していないものを書いたら欺瞞になる」
「立ち止まると全体は進まない」
というもっともらしい前提です。

ここを一つずつ疑い始めた瞬間、
クラウドは“問題”ではなく“素材”に変わります。

さて、ここが考える踏ん張りどころである。

世間感覚では、B→Dを先に考えるだろう。
つまり、「理解していないものを書いたら欺瞞になる」 という理由だ。
だから、こちらから消そう。

読者は、書き手がその道のプロであると思い込む。
だから私も、「理解できるまで書いてはならない」という思い込みに囚われている。
でも、読者目線で見れば、私がその道のプロであるかを検証するすべはない。
それよりも、著者が伝えたいことが、読者へ正しく伝わるかが問題なのだ。
TOCクラウドについて、著者が深く理解しているか否かは、読者には分からない。
それよりも、謙虚で真摯な姿勢が大切だ。

著者としての私の本質的な問題は、
何を伝えたいのか、が明確になっていない
ということだった。

頭をガツンと、殴られたかのような衝撃だった。
なんで、こんな根本的なことを理解していなかったんだろう。

ここまで思考を進めた結果、B→Dの結びつきがプッチンと切れた。

「理解していなくても、
伝えたいことが明確なら書ける」

のである。
著者としての道徳感は抜きにして。

では、他方はどうだろうか?
C→D'の結びつきである。

片方の前提を壊してみると、残りも同じ構造であることに気がついた。
まるで鏡の世界を見ているようだった。
とにかく体裁を取り繕ってでも、書く、連載に穴を開けない、という成果ばかり気にしていた。
これも本質的には誤りだ。
著者として「伝えたいこと」を明確にして、それさえ書ければ良い、という境地に至ることが大事なのだ。

こうして、C→D'の結びつきも、同じようにガラガラと音を立てて崩壊した。

まとめ

AIは鮮やかに解説してくれた。

B→D と C→D’ の両方を壊したことで、
クラウドはこう変質しています。

D と D’ のどちらも
「取る必要がない行動」になった

対立は「解決」されたのではなく
存在理由を失った

つまり、

書く/書かない
無理する/立ち止まる

という二項対立そのものが、問いとして意味を失った。

これが、クラウドの「蒸発」です。

そして、最後に残ったのは、

著者として、何を伝えたいのかを明確にすること

でした。

こうして、この節を前に私が抱えていた対立は、
TOCクラウドについて書くか、書かないか」ではなかったことが分かった。

何を伝えたいのかが定まらないまま、
行動だけを選ぼうとしていた。
それ自体が、対立を生み出していた。

AIの助けを借りて、クラウドを利用することで、ようやく辿り着いた境地。
やってみれば分かる、はその通りだった。
こうして、私は、実地でクラウドの破壊力を体験したのだった。