東京〜現実歪曲フィールド界隈

東京で外資系企業の営業で働く人

第三章(1)ロジックツリー──TO-BEからの逆算思考

成功法則の一つに、
ゴールから逆算して考える
というものがある。
ゴール、TO-BE(あるべき姿)が明確な時、ロジックツリーはとても有効である。

決算期末が12月であることの多い外資系企業では、
1月は業績評価と新年度の業務目標を決める月だ。

達成すべき今年度の目標や予算が、上から降ってくる。
だが、どうやってそれを実現するか?
懇切丁寧に教えてくれる人はいない。

文字通り自分の責任と権限で、実現する方法を考えなければならない。

予算達成を例に、どのように戦略立案するかを考えてみよう。

予算達成への戦略立案

成り行き任せで、予算が達成できる幸運もある。
しかし、それには準備ができていることが前提だ。

まず最初に、フレームワークに区切って考える。
製品別、顧客別、用途別などの様々な切り口で予算を分解しながら、

  • どこを、どのように伸ばすか?
  • どの部分が、自然減で凹みそうか?
  • 景気動向の影響を受けやすい部分の傾向と対策は?

といった問いをたてて、一つひとつ考える。
その際、部分で考えず、全体構造を意識する。
相互の関係性を踏まえ、打ち手が及ぼす影響を考慮しつつ、戦略を立案するのだ。

このように、あらかじめ「どこを、どうするか」の準備ができていれば、予算達成の雲行きが怪しくなった時点で、素早く対応できる。

これまでの文脈で語るならば、
目標を達成するためのKPIを、計器として眺めるだけでは不足だ。
まず、事前に手の打ち筋(ソリューション)を用意する。
ひとたびKPIが異常を示したとき、用意した打ち手を澱みなく実行する。
そうして、結果的にKPIを改善する。

事前にソリューションを用意するには、対象の構造がわかっていることが大前提である。

長年している自分の仕事ならば、構造は手に取るようにわかる。
だが、そうでない場合はどうしたら良いのだろうか?

ロジックツリー〜企業参謀

大前研一氏の「企業参謀」で、ものごとの本質に早くたどり着くための方法として紹介されているのが、イシューツリーである。
世界で一般的には、ロジックツリー(Logic Tree)と呼ばれている。

本書が書かれたのは、1975年4月。
実に、半世紀も前に書かれたビジネス書であり、もはや古典の領域だが、時の重みに負けない名著である。
私が初めて『企業参謀』を読んだとき、
強く印象に残った場面がある。

それが、
「企業の利益を改善するには、どうすればよいか」
という問いに対して、
ロジックツリーを組み立て、原因を細分化しただけでなく、さらに必要な(と考えられる)分析事項に綺麗に落とし込まれていく過程だった。

いま読んでも、
ここまで十分に考えを落とし込めているか?不完全な自分に恥入りたくなる。

利益とは何か。
それは、売上からコストを引いたものだ。

では、売上を伸ばすにはどうするか。
価格を上げるか、数量を増やすか。

一方で、コストを下げるにはどうするか。
原価を下げるか、固定費を削減するか。

このように、
一つの問いを起点に、
論理的に、順序立てて分解していく。

イメージ:プロフィットツリーの出発点〜企業参謀
だが、ここで終わりではない。 販売量を増やすことについて、さらに市場の成長性、シェア拡大の可能性を論じ、さらにケースを細分化して、必要となる分析事項を決めていく。
イメージ:シェア拡大のためのプロフィット・ツリー〜企業参謀

例えば、「製品Aの適応市場をm以外に伸ばせるのか?」の問いに対して、必要となる分析事項の例として、

  • 地理的拡大の可能性
  • 最終ユーザー・セグメント拡大の可能性
  • 拡大のコスト・ベネフィットの比較

を提示している。

逆算し、拡散して考える

このように、ロジックツリーの場合は、解決すべき課題(イシュー)について、逆算して、構造化する。

似た有名なものに、トヨタ自動車の「なぜを5回繰り返す(WHY x 5」というものがある。
どちらも、KPIなどが示す表層の問題の本質的原因がどこにあるのか、掘り進めていく考え方である。
シンプルで、極めて直線的だ。
局所原因の特定には強いが、
構造的な広がりをあえて無視する点に注意したい。

逆算し、思考を拡散して、構造に落とし込むところに、ロジックツリーの強みがある。

どこまで掘り進めばいいのか

ただ、「WHY x 5」のメリットは、なぜ?を5回繰り返せばいいという、終了点が明確である点だ。
一方でロジックツリーでは方法論上の終わりを設定していない。

その気になれば、分解を延々と繰り返して、非常に微細な単位にまで落とし込むことはできる。あくまで理論上は。
しかし、それが有用なのか?となると話は違う。
無限にすべきことを増やしてしまうからだ。

効果の大きさに無頓着に、
できることを全てやったとしても、
その価値は最大化しない。

Doing more with less
(DMWL: より少ない労力で、より多くの成果を)
これは、常に意識したい原則だ。

イシューからはじめよ[改訂版]――知的生産の「シンプルな本質」の冒頭で、安宅和人氏はこう指摘する。

  • 「問題を解く」より「問題を見極める」
  • 「知れば知るほど知恵が湧く」より「知りすぎるとバカになる」
  • 「一つひとつを速くやる」より「やることを削る」

そして、氏は「犬の道」に踏み込むことに、大いなる警鐘を鳴らしている。
犬の道とは、「一心不乱に大量の仕事をすることで、バリュー(価値)をあげようとするルート」、すなわち、質を量でカバーするアプローチである。

TO-BEがなかなか見えないとき

あるべき姿、解決すべき課題が明確であるとき、逆算して考えるロジックツリーの破壊力は抜群である。
しかし、そもそもの根源的な問いが見つからないときは、全く役に立たない。

個別の事例、事実が多く集まっている
解決すべき状態だが、最終的にどうするべきか?
TO-BEを明確に描けない、言語化できない
こんな時、ロジックツリーは、全く役に立たない。

それはなぜなのか?
経験が浅い頃は、私も分からなかった。

TO-BEが言語化できない状態で、ロジックツリーを使おうとしても、
一番上に置く根本的な問いを間違えるばかりか、
個別の事例を解決すべき課題と早とちりし、
対症療法的な考察に陥りやすい。

木を見て、森を見ず
になるからだ。

ロジックツリーは、ボトムアップのための方法論ではない。
ロジックツリーは、トップダウンのための方法なのだ。

次の節では、ボトムアップの方法論を議論する。