第2章の第1回の終わりで、二つの問題提起をした。
ひとつは、「考える続けること」は不可能であること。
このことについては、第2回で説明した。
思考を中断し、安心して再開できる、仕組みを導入し、
忘れないための、リマインドと定期的なレビューをする環境を整えることである。
そして、もうひとつは、世界が動き続けることへの観察だ。
状況が変われば、最適解は変わる。
状況の変化をどう「察知」するか?
私は勘が優れているから、何となく分かる、
では答えにならない。
それでは再現性がない。
誰にもできない。
時計を見るように、何かを見て判断するはずだ。
例えば、投資信託などで投資をしているなら、以下の指標を耳にして、何らかの判断の根拠にするだろう。
日本株なら、日経平均株価、TOPIX(東証株価指数)。
アメリカ株なら、NYダウ平均、NASDAQ総合指数。
為替レートも見るし、金利の動向も確認する。
CPIなど物価の動向や、機械受注統計なども気にするかもしれない。
こうした指標は、「世界経済の動き」を反映している。
世界を記述する方法
前述したように、世界を記述するには、測定可能な指標を用いる。
例えば、東京二重橋の天気を記述するには、以下の項目を用いるだろう。
- 気温
- 湿度
- 気圧
- 風向・風速
- 日照量
- 雲量 など。
これらのうち、特に気圧は、天候の変化を予測する上で非常に有用な指標になる。
このように、結果に影響を与える予兆としての指標は、先行指標(Leading Indicators)と呼ばれる。
先ほどの投資に関する話では、機械受注動向などが先行指標として経済ニュースで取り上げられることが多い。
一方で、すでに起きた結果を反映する遅行指標(Lagging Indicators)がある。
わかりやすい例では、売上高。
販売結果を反映する指標だからである。
私たちは、すでに起きた過去を写す鏡としての遅行指標と
すでに起きた未来を写す覗き窓としての先行指標の
これら二つの指標を利用して、世界を記述しているのだ。
最適解の妥当性評価には先行指標を使う

目的地に向かって進むために、
操船者が見るのは「どう動いたか」ではない。
それは、結果でしかない。
見るべきなのは、
風向きがどう変わり始めているか
風速が強まっているのか、弱まっているのか
潮の流れが、艇をどちらに押しているのか
といった、これからの進路に影響を与える兆しである。
言い換えると、「どう動くか」である。
もしも、GPS上に記録された航跡を確認してから
目的地からズレていることに気づいたとしたら、
それではもう手遅れだ。
起きた結果である遅行指標は、振り返りには大変役に立つ。
最適解が機能しなくなった結果については、説明してくれる。
しかし、それでは「後の祭り」で言い訳にしか使えない。
最適解が機能しなくなるかも?という不確実性を判断するには、
先行指標しか使えない。
私たちが見ている、対象にしている物事について
先読みするために有用な、先行指標はないだろうか?
先行指標としてKPIを利用する
KPIとは、Key Performance Indicator(重要業績評価指標)の略。 膨大なデータやパラメーターの中から、現状を最も的確に映し出し、改善の「鍵」となり得る指標を、人為的に選び出したものである。
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仕事であれば、よく参照するKPIがあるだろう。
例えば、リードタイム。
受注から、生産、納入までにかかる平均の時間である。
今、現在のリードタイムを知ることで、
需要が増減した場合に、最適解(生産計画・在庫方針)を変える必要があるかどうかを早めに察知できる。
このように、先行指標として使えそうなKPIをリストアップする。
リストアップしたKPIの中から、最適解に影響するものを精査する。
そして、使えそうなKPIの一つひとつについて、KPIがどのように変化したら、最適解を改める必要があるのか、閾値を決める。
ここまでできたら、あとは、思考を生産的に中断するシステムの中に、組み込めばいい。
リマインドで設定したタイミング
定期レビューのタイミング
この二つのタイミングで、先行指標のKPIについて評価を行う。
これができれば、致命的な失敗を防ぐことができ、
傷口を広げることなく、最適解の調整ができるようになる。
ズレに気づく
最適解が今も機能しているかどうかを確かめるために、
私たちは、何も「正解」を知る必要はないのである。
大切なことは、ズレ始めていることに気づけるか?だ。
成功の確率を上げるためには何をするのでしたか?
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成功の確率を上げるには? - 東京〜現実歪曲フィールド界隈
でしたね。
ズレに気づくことができれば、成功の確率は高まるのです。
そのために使えるのが、KPI。
KPIは、単なる指標で、答えを教えてくれるものではない。
進んでいる方向が想定とずれ始めていないか、ズレを可視化する計器だ。
時計が「正しい行動」を教えてくれるわけではないように、
KPIもまた、「何をすべきか」を直接指示するものではない。
ただ、立ち止まるべきか、舵を切るべきかを考える材料を与えてくれるのだ。