知的生産ツールの代表格である、「フレームワーク」は切れ味が大変鋭く、AS-IS、TO-BEを言語化するには、必要不可欠なツールの一つです。
フレームワークというのは、扱う対象に対して「思考の型」を適用して、様々な側面に切り分けて、モレなくダブりなく(MECE)、整理をするためのツールです。 3C分析、SWOT分析、STP分析、ポーターの5 Forces分析。 これまでに、戦略立案や市場分析を助ける様々なフレームワークが開発されてきました。 これらはMBA教育などを通じて世界的に普及した「標準言語」とも言えるものです。 その切れ味は抜群で、混沌とした現状を非常にすっきりとした構造体へと整理できるようになります。
言語化のためのツール - 東京〜現実歪曲フィールド界隈
STP分析
数あるフレームワークの中で、マーケティング分野で最もよく知られているものの一つは、STP分析です。 STPとは
- Segmentation: セグメンテーション/細分化
- Targeting: ターゲティング/細分化した中から狙いを定める対象
- Positioning: ポジショニング/ターゲティングの中での位置付け
というマーケティングで市場のどこを目指し、どのように受け入れられるかを考えるフレームワークです。
マーケティングと聞いただけで、MBAじゃん、と拒絶反応が出る方もいるかもしれません。
でも、そんなに構える必要はありません。
意識せずとも、似たようなことは誰しもが自然とやってきたことなのです。
無意識にやってきたSTP
例えば、学校のクラブ活動の時、誰が決めたわけでもないけれど、一人ひとり、何らかの役割を果たしていたのではないでしょうか。
- 議論の口火を切る
- 誰も発言していないようなことを提案する
- 建設的な反対意見を出す
- 議論の行方を黙って見守る
- 相槌を打って、わかるよーという雰囲気を出す
- 険悪な空気にならないように、上手に助け舟を出す
など、いろいろな役割や立場があったと思います。役割の分類が、セグメンテーションであり、その中から選ぶことをターゲティング、その集団の中でどのような立場に立つかを決めるのがポジショニング、というわけです。
所属する集団が変わると、それに応じて自分の役割を適宜変えたりしていませんか?
自分に求められている、そうすべきだと感じた、自分のポジショニングの調整をしていませんか?
このように、無意識的にSTPをやっているのに、気が付いていなかっただけだったりします。
狙いをどのように定めるか?
マーケティングに限らず、組織などでの自分の位置付けの戦略にも使える、STP分析は、言い換えると「狙いを定める」ためのフレームワークです。
選択と集中という言葉がありますが、選択をするとはセグメンテーションした対象の中からターゲティングを決めるということです。
どうしてそうするのか?
八方美人では万人ウケどころか、全く刺さらない。
尖っていないと、見向きもされない。
そして集中しないと、ポジショニングを決められないからです。
狙いを定めるためのSTP分析のフレームワーク、それでは、一番肝心なところは何でしょうか?
それはセグメンテーションです。
ポジショニングではないの?と思われるかもしれません。
なぜならば、すぐ上で述べているように、正しいセグメンテーションでターゲットを決めないと、ポジショニングは語れないからです。
セグメンテーションは意外と難しい
対象を細分化するときに注意しなければならないことがあります。
それは全対象をモレなくダブりなく、つまりMECEに区分しなければならないということです。
性別で男性と女性に分ける。
これは簡単なことです。
最終学歴で分ける、も難はありません。
しかし世帯年収別に分ける、はどうでしょうか?
分類する世帯年収の幅をどう決めるべきなのか、正しい答えは簡単に見つからないと思います。
でも、ここを間違えると、ターゲティング、ポジショニングで失敗します。
複数の分類軸を同時に使うときも、注意が必要です。
20代、正規社員、女性
というセグメント分けをすることは可能ですが、
さらに未婚か既婚かというセグメントを掛け算した方が良いのか、
30〜33歳も加えた方が良いのか、
誰も答えを知りません。
もっともらしいセグメント分けは簡単ですが、そこに理論的根拠を求めようとすると、一気に難しくなります。
また、セグメントを定義しても、分類に難しい事例も存在するかもしれません。
STP分析の課題
STP分析の課題は、そのままセグメンテーションの課題でもあります。
第一に、対象を無理やりセグメンテーションの枠組みに当て嵌めようとする。
帯に短し、襷に長し
という言葉があります。
ある長さの細長い布を帯に使用するには短いし、タスキとして使用するには長すぎるというもので、生地をどちらの用途にセグメンテーションするにしても難しい、分類ができないという問題です。
事実に目を瞑って、無理やりセグメンテーションの枠を変更したり、当て嵌めたり、恣意的に細分化していませんか?
自分に都合の悪いことを無かったことにしていませんか?
理路整然としたセグメンテーションには憧れますが、世の中には「型破り」も存在します。
招かれざる異物を排除していませんか?
第二に、セグメンテーションをするときは、スナップショット、つまり時間を止めざるを得ない、ということです。
統計データを活用する場合、統計をとった過去の時点での情報です。
近似的に少し先の未来まで、統計の情報を利用できるかもしれませんが、未来永劫ではありません。
現実は常に動いているからです。
これ、PDCAサイクルの時にも、指摘しましたね。
第三に、ポジショニングまで、STP分析を成し遂げました。
でも、それで満足してしまう。
すぐに行動に落とし込めていますか?
最初のSTP分析は、PDCAサイクルでいうところのPlanでしかありません。
速やかに、Do、実行しましょう。
PDCAのCで新しい現実を捉え、AでSTP分析をUpdateすればいいのです。
このように、STP分析の場合は、
- 無理やり分類を当てはめてしまう問題
- 時間を止めて分析していることを忘れてしまう問題
- 分析したことで満足してしまって、行動が遅れる問題
があります。
王道ゆえの限界を理解する
STP分析は、マーケティングのイロハ中の「イ」の一番です。
狙いが明確でなければ、その後のマーケティングミクスや、アテンションを集める戦略が成り立ちません。
アテが外れた、のではなく、最初から間違っていたところをアテにしていた、もしくはモタモタしている間にターゲットが変質していた、のかもしれません。
移ろいゆく現代に生きる私たちでも、自分に都合の良いように「枠」に当てはめ、「いつまでも変わらない」と慢心し、「後でゆっくり」と先延ばししてしまうが故に、成功の確率を下げてしまっているのです。
STP分析そのものには、何の落ち度もありません。
ここでも、使用する私たちの方に、問題があるのです。