東京〜現実歪曲フィールド界隈

東京で外資系企業の営業で働く人

【参考図書メモ】再現困難な初読時の「鮮やかさ」──企業参謀

第三章の第1回では、ロジックツリーについて書く予定でいる。
その際、どうしても『企業参謀』を通じて説明を展開したいと考えている。

この本を初めて読んだのは、もう15年以上前になる。
当時、強く印象に残ったのは、問題を分解していく手つきの鮮やかさだった。
複雑に見える課題が、一本の木として整理され、それぞれの枝の先には、問題解決のための分析事項が並んでいく。
その構造が、一気に腑に落ちた記憶がある。

ところが今回、ブログの原稿を書くために該当箇所を読み返してみても、
当時のような感動は、簡単には戻ってこなかった。

方法論が古くなったから、という単純な話ではない。
見慣れてしまったから感動が薄れた、というだけでもなさそうだ。

あれから15年、様々な課題に直面し、企業参謀を参考に試行錯誤してきた。
変わったのは、おそらく自分の方だ。
成長したかどうかは分からない。
ただ、自分が扱っている問題の性質や、置かれている環境が、大きく変わったのは確かだ。

イシューツリー(ロジックツリー)は、今もなお強力な思考の道具である。
ただし、どこからスタートするのか。
どこまで枝を張るのか、つまり、どこで分解を止めるのか。
その判断が、いまだによく分からない。

よく分かっていないものを、紹介してよいのだろうか。
そう考えたところで、タイプする手が止まった。

第三章の書き出し自体は悪くない。
だが、第1回で最も重要な部分が、どうしても埋まらない。
結論の方向性は見えているのに、である。

いまはAIとの壁打ちをしながら、考えては休み、また考える、という時間を繰り返している。
この違和感そのものを、次に進むための手がかりにしたいと思っている。

※本稿で触れているイシューツリー(ロジックツリー)に関する記述は、「 [新装版] 企業参謀 戦略的思考とは何か 第1章 戦略的思考入門/4 常に本質に迫るための方法論」を参照しています。

執筆ノート〜1 書き始めてからの3週間

ブログを開設したきっかけ

2026年1月15日、
このブログを開設し、投稿を始めました。
正確に言えば、ブログを書くこと自体は何度目かの「再開」になります。

きっかけは、年末年始のまとまった休みのあいだに、AIと壁打ちをしていた時間でした。
取り留めもなく考えを投げかけ、返ってきた言葉にまた反応する。
その往復を繰り返すうちに、「これは自分が読みたい本だな」と思えるアイデアが、次第に形を持ちはじめました。

気がつけば、新年を迎えてからほどなく、出版社に企画書を送っていました。
序章、第一章、そして第六章。
まだ途中でありながらも、全体像だけはどうしても書き切っておきたかったのだと思います。

せっかくそこまで書いたのだから、この内容を閉じたままにせず、まずは公開してみよう。
できることなら、書籍という形にまで辿り着きたい。
そんな少し欲張りな願いを抱きながら、ブログという形で、できるだけ毎日投稿を続けることにしました。

結果として、15日間、連続で記事を公開しました。

書き直すだけのはずが

序章、第一章、中心となる第五章の原稿は用意済みでした。
ですから、少しだけ整形して投稿するだけだと正直に言えば甘く見ていました。
そして、時間稼ぎをしている間に、第二章から第四章までを書けばいいと、考えていたのです。

ただ、一度書いた文章は、書いた瞬間に完成するわけではありません。
読み返すたびに、 「もう少し分かりやすくできるのではないか」
「この例は本当に読者に伝わるだろうか」
と、次々に気になる点が浮かんできます。
書くことよりも、むしろ書き直すことの方が、ずっと重たい作業なのだと、あらためて実感しました。

そうした試行錯誤を重ねるうちに、心のどこかで、この作業が簡単なものではないことを、はっきりと自覚するようになりました。

そして迎えた、1月の最終週。
営業の仕事は、月の初めと終わりに負荷が集中します。
1月の最終週は、例外なく、十分な余裕を確保できない日が続きました。

第三章の基本構成自体は、すでに出来上がっています。 それでも、その第1回目を書き出そうとしたところで、思った以上に筆が止まりました。

参照図書の呪縛

理由はいくつかありますが、ひとつ大きかったのは、「このまま書き進めてよいのだろうか」という迷いでした。
参照すべき文献は本当に押さえ切れているのか。
過去に読んだ本を、記憶だけで扱ってしまってよいのか。
そうした逡巡が、思考のスピードを確実に落としていきました。

この「執筆ノート」では、完成した文章ではなく、こうした迷いや立ち止まりも含めて、書いていこうと思います。
何を考え、どこでつまずき、どうやって次の一文に進んだのか。
その過程自体が、この連載のもう一つの側面だと考えています。

第二章(5)コントロールすべき対象はどこにあるか

多忙で、多様な毎日を送る私たちは、
「成功の方程式」のような万能解に憧れる。
そういうものがあれば、本当にいい。
でも、残念ながらそのようなものが存在するほど
この世の問題は簡単ではないし、単純ではない。

あるのは特定の状況で有効な「最適解」の群れだ。
どれを選び、どの方向へ向かっていくのかは、
現在地たるAS-ISと、目的地たるTO-BEのギャップから
方向を捉えていく。

そのギャップを掴む指標にKPIがあり、
様々なKPIの中から、現状を正しく観察した結果のKPIを用いて、
選択した「最適解」が今もなお有効であるか、確認し、
すでに起きている未来たる、先行指標のKPIを参照して、
TO-BEへ向かうための方策を実行していく。

この行程は、まるっきりPDCAサイクルを回しているようだ。

  1. PlanでAS-ISとTO-BEを定義し、
  2. Doでギャップをベースに最適解を選び、試す。
  3. Checkで最適解が機能しているかKPIで評価し、
  4. ActionでTO-BEへ向かうための方策を実行する。

AS-ISとTO-BEを再確認する

こうして私たちは、PDCAサイクルでいうところの、2周目に突入する。
上昇する螺旋(スパイラル)の次のフェーズにレベルアップしたのです。
私は、最初にこのことに気がついた時、正直ズッコケてしまいました。

あれ、振り出しに戻ったんじゃないの?
いいえ、そうではないのです。
私たちは、ひとまわり成長して。
次の段階に入ったのです。

ですから、再びPlanなのです。
なぜならば、

コントロールしてよいものだけに集中して、適切にコントロールする

第二章(4)制御とKPI〜何をコントロールできるか - 東京〜現実歪曲フィールド界隈

ことを学んだからなのです。
もう、これまでの私たちとは違うのです。

それではさっそく、AS-ISとTO-BEを見直してみましょう。
特に、これらを記述するKPIに注目します。
4つの分類でKPIを分け、コントロールして良いものとそうでないものを見極めるのです。
してはならないこと、この見極めがまず大事です。
操作変数以外のKPIはコントロールしようとしてはダメなのです。

とはいえ、直接操作したい欲求に駆られるKPIを良くしたい。
良い方向に持っていきたい。
それは、誰もが持つ本能です。欲求です。
誰にも止めることはできません。

それでは、どうしたらいいのか?
それを考えるのが、2周目のPlanなのです。
改善したいKPIをどうするか、
答えは、AS-ISとTO-BEにあります。

相互の関連性とプロセス

もう少しだけ、具体的に考えてみましょう。
これから二つの例題を出します。
どちらも、共通して、KPIの改善を目的とした短絡的な改善を試み、
本質的な問題に気がつかないで、状況を悪化させるミスを犯す
ことが学べるケースです。

ケース1:ボトルネック滞留時間
あなたは、ある製品のリードタイムを短縮するプロジェクトを担当することになりました。
一連のプロセスを分析したところ、製品の塗装工程が全体の遅延の原因となっていることが分かりました。
塗装工程では、色変えの段取りに時間を要するため、
同じ色をまとめて塗装した方が効率的だとされている。
その結果、前工程から仕掛品は届いているものの、
塗装工程に投入されるまでの滞留時間が発生しているのです。
この滞留時間を減らすことで、全体の生産性を最適化できそうだ、とあなたは確信しました。
あなたなら、どのような改善を提案し、ボトルネック滞留時間を減らしますか?

ケース2:意思決定回数
あなたは、繰り返し行われるあるタスクの業務改善を目的としています。
AS-ISの分析の結果、そのタスクの実行プロセスには、多くの「意思決定ステップ」が存在していることがわかりました。
プロセスマップを書くと、判断を要する菱形が非常に多いチャートであることが明らかになりました。
これは、KPIでいう「意思決定回数」が、他の繰り返しタスクと比べて突出して多い状態を意味します。
インタビューの結果、その意思決定の多くは、判断基準が明文化されておらず、担当者の経験や裁量に委ねられていることがわかりました。
意思決定回数が多いと、そのたびに決定者のリソースが必要になり、プロセスは頻繁に停止します。
結果として、流れが寸断され、全体として非効率になります。
では、この意思決定回数そのものを減らすにはどうしたら良いのでしょうか?

ケース1:ボトルネック滞留時間 の解説

塗装工程が全体の遅延の原因となっているならば、
塗装工程の生産性を改善すれば良いのではないか、
と考えるのは、ごく自然な発想である。

だが、少し待ってほしい。
塗装工程の滞留時間が長いのは、それを計測した結果わかったことだ。
そもそも色変えにおける工程のロスが大きいので、効率化のために滞留時間が増大しているのである。
塗装工程はすでにベストを尽くしている。
それなのに、リードタイムの圧縮の時と同じように、

  • 塗装工程の人員を増やす、
  • 24時間体制にする、
  • 「頑張れ」と根拠のない励ましをする。

こうした対応をとっても、滞留時間が短縮されないのは、当然なのである。

なぜならば、このボトルネック滞留時間は、
原因ではなく、私たちが状況を観察した結果として現れたKPIであり、
分類上は観測変数にあたるからだ。

以上のように、
少なくとも塗装工程そのものに問題はなさそうだ。
では、問題の本質はどこにあるのだろう?

それは関係性だ。
私たち人は、人間関係で苦しむように、
プロセスでは前後関係で苦しむのだ。

塗装工程の前工程は、
塗装工程が抱える制約を理解しているだろうか?
色変えによるムリ・ムダを最小化できるよう、
次工程を意識した流し方をしているだろうか?

このように考えを進めていくと、解決の糸口が見えてくる。
ボトルネックである「塗装工程」にとって都合の良い仕事の塊を
前工程から塗装工程に流すのが、正解なのだ。
つまり、前工程のWIP(Work in Process: 着手済み未完了タスク)の量をコントロールするということなのだ。
このように、操作すべきKPIは、構造の中から立ち上がってくるのである。

ケース2:意思決定回数 の解説

このケースでは、
あるタスクの実行プロセスにおいて、
「意思決定回数」というKPIが多いということがわかった
というケースである。

ここでも、意思決定回数というKPIは観測変数である。
したがって、意思決定回数を直接減らそうとしても、意味がない。
むしろ、有害ですらある。

判断を急がせたり、
省略したりすることで、
誤判断や手戻りを増やしてしまうからだ。

意思決定回数が多い、
それも、判断基準が明文化されていないのが原因なのだから、
プロセスそのものに問題がある。

判断基準を明文化し、
自動的に処理できるように工夫するなど、
プロセス設計における改善が求められるのである。

イメージ:Control the Structure, Not Just the Numbers

コントロールすべき対象は構造の中に

ここまで見てきたように、
KPIをいくら並べても、
それだけでは「何をどう変えるべきか」は見えてこない。

必要なのは、
課題の構造を理解することである。
何をすれば、
どこが動き、
何がどう変わるかを
知ることである。

次の章では、
問題をCase-by-Caseで分解し、
構造として捉えるための思考法を導入する。

第二章(4)制御とKPI〜何をコントロールできるか

先の投稿で、最適解が機能しなくなりそうな兆候を捉えるために、KPIを利用することを紹介した。
その逆はどうだろう?
つまり、最適解が機能し続けるように、KPIをコントロールする
のはダメなのか?

リードタイムを短縮する行為は正しいか?

誰もが一度は取り組んだであろう、リードタイムのコントロール
リードタイムとは、依頼の発生から、依頼ごとの提供までの時間のこと。
販売でいえば、受注から製造・納品までにかかる時間である。

このリードタイムが、何らかの理由により通常よりも長くなってしまった。
その結果、在庫管理や生産管理などの最適解が機能しなくなった。
そこで、リードタイムを短くする努力をする。

具体的には、

  • 残業などで投入する時間を増やしたり
  • 作業スピードを早くしたり
  • 作業者にはっぱをかけてとにかく急がせる

なんてことをする。
そして、その結末はどうなるだろうか?

  • 無理が常態化し、
  • ミスが増え、
  • 手戻りが発生する。

その結果、リードタイムはさらに制御不能になっていく。

最適解が機能し続けるようにKPIの改善を試みたら、
逆に、最適解を壊してしまう。

人生いろいろ KPIもいろいろ

一口にKPIといっても、実に色々ある。
試しにAIに質問してみたら、40〜50は簡単に挙がった。

分類方法は様々あるが、性質をベースにすると、以下の4つに類別できる。

  1. 操作できるKPI(操作変数)
  2. 状態を表すKPI(状態変数)
  3. 観測・計算して得られるKPI(観測変数)
  4. 結果としてのKPI(結果変数)

最適解が機能しなくなる予兆を捉えるのは、3の観測・計算して得られるKPIであり、リードタイムはここに属する。
3の観測変数とは状態や結果を数値として可視化したものであり、KPIの多くがここに属する。

リードタイムの他には、

  • 1日あたりの処理件数
  • 稼働率
  • 中断回数・再作業回数

などが挙げられる。

これらのKPIを直接コントロールしようとすると、リードタイムと同じように酷い目に遭う。
そのことについて、LifeHackを例に見てみよう。

LifeHackと観測変数としてのKPI

LifeHackは、日常生活や仕事の中で発生する様々な課題に対し、ちょっとした工夫により、少しの手間で最大の成果を得ようとする実践的かつ実験的な試みだった。
ちなみに、コロナのパンデミックの前は、LifeHackの取り組みは大変に流行していた。

例えば、以下のような取り組みである。

するべきことが多いのであれば、より多く実行できるように、リードタイムを短縮しようと考える。タスクの実行に要する時間を計測・見積り、無駄を減らして、できるだけ時間をかけないで完了させようとした。

1日の処理件数を増やそうとして、スキマ時間の有効活用を試みた。
例えば、「通勤時間」や「移動時間」にもギチギチにタスクを詰め込んだ。

上司やお客様からの突然の依頼を「割り込みタスク」として忌み嫌い、誰にも邪魔されないように会議室に籠った。また、急な依頼に対しては、今忙しいのでと断るようにしていた。

これらの行為は、観測変数としてのKPIをコントロールしようとしています。
三つの例は、上から

  • リードタイムの短縮
  • 1日あたりの処理件数の増加
  • 中断回数の削減

のKPIを制御する試みである。
果たして、うまくいくのだろうか?

でも、LifeHackにまみれた人なら、よく分かるだろう。
私もそんな一人だ。
そんなことをしていると、疲弊してしまう。
結果として、うまくいかないことが多かった。

  • リードタイムを短くしようとして、タスク実行の質が低下した。
    自尊心も低下した。
  • 処理件数を多くしようとして、1件あたりにかけられる注意力が不足し、散漫になりがちだった。
    心が悲鳴を上げた。
  • 稼働率を改善しようとスキマ時間を利用しすぎて、休息時間が消滅し、回復のいとまがなかった。
    動画を見ても楽しくなく、罪悪感だけが募った。

私がフォローしていたLifeHack界隈でも、鬱になってしまった人は、少なくなかった。

うまくいったLifeHack

でも、LifeHackの全部がダメではなかった。
今でも有効で、使っているものも多くある。

例えば、

  • 毎週の定期的なレビュー
  • 原則シングルタスクで実行
  • 均一なタスクの粒度

といった、LifeHackは今も有効で、大活躍している。

定期的なレビューは、すでに瞬間冷却と瞬間解凍で思考の中断と再開を安心して行える仕組みとして、詳しくご説明した通りだ。

シングルタスクとは、何かを実行する際は同時並行的に複数のことをしないで、一つに集中すること。
これはWIP、仕掛かり量の上限をコントロールすることだ。

タスクの粒度を揃えるのは、1分でできるタスクと様々な調査や調整をして取り掛かるべき重いタスクを一緒に管理しない、考えないということ。
これは、バッチサイズを揃えるということだ。

ここで挙げた3つのLifeHackをKPIに変換すると、上から

  • レビュー頻度
  • WIP(仕掛かり量)
  • バッチサイズ

である。

これらのKPIは先に挙げた4分類の中で、操作することができるKPI(操作変数)に相当する。

操作変数のKPI

もう一度、KPIの4つの分類を確認する。

  1. 操作できるKPI(操作変数)
    例:WIP*1、レビュー頻度*2、割り込み許可ルール*3、着手基準*4、バッチサイズ*5

  2. 状態を表すKPI(状態変数)
    例:タスク滞留時間*6、集中時間の分断度*7疲労感・認知負荷、仕掛かり仕事の偏り*8、チームの安定度*9

  3. 観測・計算して得られるKPI(観測変数)
    例:リードタイム、処理件数/日、中断回数、レビュー指摘件数、再作業回数

  4. 結果としてのKPI(結果変数)
    例:売上・利益、顧客満足度、成果物の品質、成功率、評価・信頼

以上のように、操作できるKPIは数多あるKPIの中のほんの一部だ。

私たちは、
コントロールできないものをコントロールしようとする
さらに、
触らなくてもいいものでもコントロールしようとする
そんな誘惑に抗うことができない。

だから、
コントロールできないものに対して、
文句を言ったり、
無理に触ってしまって、さらに状況を悪くしたことに対して 悪態をついてしまう。
天気が悪いことに、文句を言っていませんか?

そのような誘惑を断ち切って、
私たちは、
コントロールしてよいものだけに集中して、適切にコントロールする
べきなのです。

イメージ:Controllable KPIs vs. Don't-Touch KPIs

コントロールの対象

繰り返しになりますが、私たちは現状を記述し(AS-IS)、あるべき姿(TO-BE)を微に入り細に入りデザインすることで、成功の確率を高めています。

  1. まずフレームワークを活用して、整理された記述をする。

  2. 次にKPIを利用して、計測可能な指標を導入し、最適解が機能するか確認できるようにする。

  3. 最適解が機能する理想状態を維持するために、操作可能なKPIをコントロールする。

  4. だが、ちょっと待て。
    操作可能なKPIを、どうやってコントロールすればいいのか?

全体像は、フレームワークにより掴んでいる。
状態を記述することは、KPIでできている。
だが、コントロールするには、
「何をコントロールしてよいのか」という対象を
明確に特定しなくてはならない。
そして、対象を特定するには、構造を理解する必要がある。

対象を決めずして、具体的なアクションは不可能だ。
構造を知らずして、効果的なアクションはありえない。

構造を知るにはどうするか?
言い換えると、
何をいじれば、何がどう変わるのか」 の問題。
次は、この問題を解きほぐす必要があるのだ。

*1:同時に抱えてよいタスク数の制限

*2:振り返り・評価を行う間隔

*3:割り込みを許す条件・時間帯

*4:タスクに着手してよい条件

*5:一度に処理する仕事の塊の大きさ

*6:着手後、完了までにかかっている時間

*7:作業がどれだけ中断されているか

*8:特定の工程に仕事が溜まっている状態

*9:日々のパフォーマンス変動・ばらつき

第二章(3)変化を察知するための指標

第2章の第1回の終わりで、二つの問題提起をした。

ひとつは、「考える続けること」は不可能であること。
このことについては、第2回で説明した。
思考を中断し、安心して再開できる、仕組みを導入し、
忘れないための、リマインドと定期的なレビューをする環境を整えることである。

そして、もうひとつは、世界が動き続けることへの観察だ。
状況が変われば、最適解は変わる。
状況の変化をどう「察知」するか?

私は勘が優れているから、何となく分かる、
では答えにならない。
それでは再現性がない。
誰にもできない。

時計を見るように、何かを見て判断するはずだ。
例えば、投資信託などで投資をしているなら、以下の指標を耳にして、何らかの判断の根拠にするだろう。

日本株なら、日経平均株価TOPIX東証株価指数)。
アメリカ株なら、NYダウ平均、NASDAQ総合指数。
為替レートも見るし、金利の動向も確認する。
CPIなど物価の動向や、機械受注統計なども気にするかもしれない。
こうした指標は、「世界経済の動き」を反映している。

世界を記述する方法

前述したように、世界を記述するには、測定可能な指標を用いる。
例えば、東京二重橋の天気を記述するには、以下の項目を用いるだろう。

  • 気温
  • 湿度
  • 気圧
  • 風向・風速
  • 日照量
  • 雲量 など。

これらのうち、特に気圧は、天候の変化を予測する上で非常に有用な指標になる。
このように、結果に影響を与える予兆としての指標は、先行指標(Leading Indicators)と呼ばれる。
先ほどの投資に関する話では、機械受注動向などが先行指標として経済ニュースで取り上げられることが多い。

一方で、すでに起きた結果を反映する遅行指標(Lagging Indicators)がある。
わかりやすい例では、売上高。
販売結果を反映する指標だからである。

私たちは、すでに起きた過去を写す鏡としての遅行指標と
すでに起きた未来を写す覗き窓としての先行指標の
これら二つの指標を利用して、世界を記述しているのだ。

最適解の妥当性評価には先行指標を使う

イメージ:計器を頼りに
たとえば、ヨットを操縦する場面を考えてみる。

目的地に向かって進むために、
操船者が見るのは「どう動いたか」ではない。
それは、結果でしかない。

見るべきなのは、
風向きがどう変わり始めているか
風速が強まっているのか、弱まっているのか
潮の流れが、艇をどちらに押しているのか
といった、これからの進路に影響を与える兆しである。
言い換えると、「どう動くか」である。

もしも、GPS上に記録された航跡を確認してから
目的地からズレていることに気づいたとしたら、
それではもう手遅れだ。

起きた結果である遅行指標は、振り返りには大変役に立つ。
最適解が機能しなくなった結果については、説明してくれる。
しかし、それでは「後の祭り」で言い訳にしか使えない。

最適解が機能しなくなるかも?という不確実性を判断するには、
先行指標しか使えない。
私たちが見ている、対象にしている物事について
先読みするために有用な、先行指標はないだろうか?

先行指標としてKPIを利用する

KPIとは、Key Performance Indicator(重要業績評価指標)の略。
膨大なデータやパラメーターの中から、現状を最も的確に映し出し、改善の「鍵」となり得る指標を、人為的に選び出したものである。

言語化のためのツール - 東京〜現実歪曲フィールド界隈

仕事であれば、よく参照するKPIがあるだろう。
例えば、リードタイム。
受注から、生産、納入までにかかる平均の時間である。
今、現在のリードタイムを知ることで、 需要が増減した場合に、最適解(生産計画・在庫方針)を変える必要があるかどうかを早めに察知できる。

このように、先行指標として使えそうなKPIをリストアップする。
リストアップしたKPIの中から、最適解に影響するものを精査する。
そして、使えそうなKPIの一つひとつについて、KPIがどのように変化したら、最適解を改める必要があるのか、閾値を決める。

ここまでできたら、あとは、思考を生産的に中断するシステムの中に、組み込めばいい。

リマインドで設定したタイミング
定期レビューのタイミング
この二つのタイミングで、先行指標のKPIについて評価を行う。

これができれば、致命的な失敗を防ぐことができ、
傷口を広げることなく、最適解の調整ができるようになる。

ズレに気づく

最適解が今も機能しているかどうかを確かめるために、
私たちは、何も「正解」を知る必要はないのである。
大切なことは、ズレ始めていることに気づけるか?だ。

成功の確率を上げるためには何をするのでしたか?

AS-ISとTO-BEの二つのギャップを埋める解法を探す

成功の確率を上げるには? - 東京〜現実歪曲フィールド界隈

でしたね。
ズレに気づくことができれば、成功の確率は高まるのです。

そのために使えるのが、KPI。
KPIは、単なる指標で、答えを教えてくれるものではない。
進んでいる方向が想定とずれ始めていないか、ズレを可視化する計器だ。

時計が「正しい行動」を教えてくれるわけではないように、
KPIもまた、「何をすべきか」を直接指示するものではない。
ただ、立ち止まるべきか、舵を切るべきかを考える材料を与えてくれるのだ。

第二章(2)考え続けるための環境と仕組み

変化のスピードが加速する世界に生きる私たちは、世界の動きに合わせて考え続けなくてはなりません。

考え続ける、
正論ですが、物理的にも、精神的にも、無理があります。

考え続けるべき対象は多いし、
日々新しくタスクは積み上がっていく。

降りかかってくる火の粉を振り払って、
致命的な失敗がないようにするだけで、精一杯だ。

だからこそ、目の前から、コツコツと、一つずつタスクを消し込み、
視界が塞がらないように、悪戦苦闘しているというのに。

考え続けることは不可能

そう言い切ると身もふたもない。
でも、紛れもない事実です。
考え続けられないのは、あなたの能力が低いわけではない。
ベストを尽くしても、実現は不可能なのです。

脳のワーキングメモリの容量に個人差はある。
でも、そんなに大差はなく、有限であることに変わりはない。
常に思考で占有していたら、メモリ不足で、いずれフリーズする。

ましてや、人が考えている最中に、こちらの都合は目にもくれず、
新しいタスクが、割り込んできて邪魔をする。

この無理ゲーの状況に対して、どうすればいいのだろうか。

「脳」の外に出す

私たちの「脳」は唯一無二で、代わりは存在しない。
頭の中で考えていることは、主観と一体化しやすく、扱いが難しい。

どうしたらいいか。
答えは、このブログの第1回の投稿で書いています。
現実歪曲フィールドの影響を避ける方法と同じです。

自分の頭の中だけで処理しようとしているから、
現実歪曲フィールドの中にいるから、
フィルターを解除できないのです。

することはとても簡単なこと。
メモとして書き出して、一旦自分の頭の中から外に出す。

現実歪曲フィールドって何? - 東京〜現実歪曲フィールド界隈

考えるためのサブシステムを用意する。

メモ帳に書き出すだけでもいいし、
タスク管理ツールを利用するのも良い、
スマホなどのメモアプリでも、ノートアプリでも、
要はなんでもいい。

考えていることを、いったん「脳」の外に取り出す。
そして、瞬間冷却する。
さらに、「忘れない」仕組みで管理をする。

「脳」は、まな板である

私たちの脳は、料理する際の「まな板」に似ている。
お肉を切ったまな板の上で、そのままチーズは切らない。
匂いと味が、移ってしまうからだ。
衛生的にも良いとは言えない。

私たちはそれと同じことを、「考える」行為の中でしてしまいがちだ。
雑多な食材が散らかったまな板を使って、美味しい料理はできない。
雑多なものが散らかったままの脳で、集中して、効率よく、考えることができるのだろうか?

一度、まな板の上から食材を移動する。
すぐに調理しない場合は、ラップなどをして、冷蔵庫に入れる。
必要になったら、また取り出す。

同じように、考えたことを、脳の外に取り出す。
考えたことが散逸しないように、メモなどを残し、瞬間冷却する。
必要になったら、瞬間解凍して、脳の中に戻す。

生産的な一時停止

瞬間冷却とは、
考えることをやめるための行為ではありません。
考え続けるための、生産的な一時停止なのです。

安心できる、外部記憶装置に、考えたことを記録する。
そうすることで、私たちは、安心して、いったん忘れられる。
忘れてもいい、という安心感が、私たちを自由に、創造的にする。

忘却への対処がなければ意味がない

ただし、ここで話を終えてはいけない。
脳の外に出して、瞬間冷却したままにしてしまっては、
単なる「忘却」に終わってしまう。

うっかり忘れてしまった。
どこかにメモを残したはずなんだけど……
ふっと、思い出した時には、もう手遅れ

そうなりそうなら、不安はますます増大する。
肝心なのは、忘れないようにする仕組みである。
考えていた時から即座に再開できる、瞬間解凍だ。

でも、幾分、私たちはラッキーだ。
ITの進化を利用できる。

  • 紛失を恐れていた紙切れのメモ、ポストイット
  • しおりを挟み忘れた読みかけの本
  • いつ書いたかわからないホワイトボードの殴り書き

こうしたものは、ITツールを使えば簡単に保存できる。
多重バックアップで、消失のリスクは少ない。
タイムスタンプも、履歴も十分に残る。

瞬間冷却と瞬間解凍が、
最新の冷蔵庫並みに、鮮度よく、簡単にできる時代です。

イメージ:絶対的に安心できる外部記憶装置

考え続けるための環境構築

必要な時に瞬間解凍できることは、心理的衛生にとって必要不可欠であるが、それだけでは足らない。
忘れてはならないのは、定期的な振り返りだ。
仕組みの定期点検でもある。

もはや古典の域になりつつある、ライフハックの元祖としても知られるGTDでは、著者のデビッド・アレンが、「週次レビュー」という方法を提唱している。

GTDは、頭の中にあるモヤモヤとしたものを全て書き出して、適切に処理するフローに乗せ、ストレスフリーな状態を目指す、ライフハックである。
この仕組みが安定的に機能するのに欠かせない要素として、週次レビューというものがある。
毎週、頭の外に書き出したもの全てに目を通し、確認する作業である。

毎週、毎月、とにかく一定の間隔で
頭の外に出して、瞬間冷却した全てのものを
賞味期限切れのものがないか、傷んでいるものはないか
一つ一つ確認するのだ。

リマインドシステム、タイマーのようなものを利用して、
忘れることなく、適切なタイミングで思い出させるような仕組み
を導入していても、
それとは関係ないタイミングでの定期的なレビューをお勧めする。

なぜならば、

  • 時間の経過に伴う思考の変化に気がつくことができ
  • 目覚まし時計が鳴る前に起きるように、事前の対象ができたり
  • 漠然と感じていた不安の正体を見つけられるかもしれないし、
  • 新しいアイデアが浮かぶかもしれない

からだ。

  1. 瞬間冷却した時に設計したリマインドによる振り返り
  2. 定期的で強制的な振り返り

この二つを組み合わせることで、
考え続けることを仕組みとして確保できる。

環境は整った

考え続けるための
生産的な一時停止の仕組みと
忘却のリスクへの対処の組み込み
この安心できる仕組みと環境を用意できてはじめて、
「今、仮採用している最適解が、今この瞬間も機能しているのか?」
を確かめるための準備が整う。

何か一つのタスクを始める時、あるいは終える時、
あなたは何をしますか?

私は、つい時計を見てしまいます。

今、何時で
これから、あるいは、これまで、どれだけの時間を? 予定通りか、まきが必要か? 今とこれからを確かめるのです。

次回(第3回)では、
この「時計のような何か」を
最適解がずれ始めた兆候を捉える指標について、考えたいと思います。

第二章(1)万能解と最適解

忙しいのが、日常だ。
仕事も、プライベートも、すべきことや判断すべきことに追われている。

ほとんど反射神経だけで乗り切っている、
そんな気がしてならない。

1日の終わりに、今日したことを振り返ろうとしても、
午前中に何をしていたのか、うまく思い出せない。
それくらい、私たちは多くのことを、短時間でこなし続けている。  

本音を言えば、
じっくり考えたい
腰を据えた、納得のいく判断をしたい。

でも、現実は、そんな余裕を許してくれない。

雨のように降りかかってくる球を、
無心で打ち返す。
もう、数は数えることはできない。
ただひたすらに、無心に。
そうしないと、悪夢のように仕事が溜まってしまう。

だからこそ私たちは、
コスパやタイパを意識し、
できるだけ無駄なく、効率よく、
テキパキと物事を片付けようとする。

それはもう、ほとんど無意識の領域だ。

正しい答えが欲しくなる衝動

その結果、短時間で下した自分の判断が、
「本当に正しかったのか」
「どこかで致命的な見落としはなかったか」
ふと、不安になる。

失敗の理由が「多忙につき」だなどと、言い訳はしたくない。
できるだけ成功したいし、報われたい。

だから私たちは、
「これさえやれば大丈夫」
「本質的に重要なこと5選」
といったネット記事に、つい、目を奪われる。

  • 誰にでも
  • いつでも
  • どんな状況でも

通用する魔法のような解答。

理性では、そんなものは存在しないとわかっている。
それでも、つい、期待してしまう。

それは、ごく自然なことです。

世の中には、学校を卒業したレベルで解けるような、優しい課題はもう、残っていない。

ひよっこだからって、誰も甘くみてくれない。

価値観も、関心も、置かれている状況も、
人それぞれ異なるこの世界で、
すべての人に等しく機能する「成功の方程式」は存在しない。
ある状況では正解だった方法も、別の文脈ではまったく機能しない。 それどころか、かえって有害だったりする。

イメージ:万能解と最適解

最適解は機能するか?

成功の方程式のような、万能解はない。
それはわかっている。
だから、その場、その時の最適解を求めればいいのではないか?

非常に合理的な考え方です。
失敗したくない
最短距離で成功に近づきたい
この態度を誰も非難できない。

でも、ちょっと考える必要があります。
星の数ほど、課題は存在します。
無数の課題に対する、最適解は簡単に見つかるのでしょうか?

おそらく、最適解に近いものは容易に見つかるでしょう。
類型化された、公約数的な課題の解答が存在するからです。

でも、個人的な経験と断りを入れますが、残念ながら、それらの回答は、ありきたりなものばかりです。

そういう、最適解もどきは、第一、世の中に溢れている。
おそらくは、あなたも知っている陳腐なものだ。
私たちが欲しいのは、もう一歩踏み込んだ、その先の回答だ。

そして、これは肝心なことですから、強調したい。

  • 最適解である以上、状況が変われば、最適解も変わる

繰り返します、止まっているのはアナタで、世界はあなたのご都合には関係なく動き続けているのです。  

失敗しないための保険

失敗には2種類ある。

致命的な失敗

ごめんなさいで済む失敗

致命的な失敗を犯さないためにも、最適解もどきは役にたつ。
これをやったらアカン、というものを教えてくれる。

また、自分にとってそれほど重要でない、大切でない課題であれば、とりあえず最適解もどきを採用し、大失敗をしないための保険をかける。

これらはとても合理的な考え方だ。

最適解は、このような場合には有用だ。
しかし、あくまで状況が変化しない間だけの話だ。

動き続ける世界の中で

私たちは、第1章で動き続ける世界を無視するリスクを議論した。

フレームワークは、知的生産ツールとして非常に有用だ。
しかし第1章では、世界が動き続けてるにもかかわらず、
私たちが「理解したと信じた過去」に思考を固定してしまうため
フレームワークそのものが機能しなくなる危うさを見た。
▶︎ 第1章「フレームワークが通用しないわけ」

万能解は存在しない。

最適解は、致命的な失敗を避ける、保険としての使用には適している。
しかし、動き続ける世界の中では、常に変化することを受け入れなければならない。

ここで二つの問題が立ち上がる。

  1. ひとつは、
    考え続けることは、物理的にも、心理的にも、無理ゲーであるということ。
  2. もう一つは、
    世界が動き続ける以上、
    最適解を「変える必要性」にどうやって気がつけば良いのか、

という問題だ。

連載の第2回では、前者を

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第3回では、後者を取り上げる。

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